こんにちは。弁理士・ネームチェンジャー®の山田龍也です。
前回の「街で見かけたネーミング」前編では、ショッピングモールのスイーツ売り場でスイーツの商品名について分析してみました。
今回は後編。今度は同じモールの冷凍食品コーナーです。餃子のネーミングも、「私なら…。」と、考えさせられた例が2つ。
知らない人は損をする。逆に、正しい知識さえあれば、あなたのビジネスは今よりずっと良くなりますよ。
■ 「深谷ねぎ ぎょ~ざ」は商品名というより、説明書きだ。
冷凍ケースで見つけた「深谷ねぎ ぎょ~ざ」。
商品の産地(深谷)+原材料(ねぎ)+普通名称(餃子)。何も間違えていることはありません。正しい。でも、これはただの説明書きです。
商品名は見た人に足を止めてもらう、興味を持ってもらう、そのためのアイキャッチです。商品の中身を完璧に説明できていれば良い名前というわけではないんです。
J-Platpat(特許情報プラットフォーム)で調べてみると、別の人が「深谷ねぎ餃子」の文字とロゴマークを含む商標を出願していました(商願2020-89307)。
結果は拒絶。拒絶の理由は品質誤認です(商標法第4条第1項第16号)。
なぜ、この商標が品質誤認を生じるおそれがあるのか、わかりますか?
この出願では、この商標を使う商品(指定商品)が第30類「ねぎ入り餃子」となっていました。この書き方だと、餃子に入れる「ねぎ」はどこ産のものでも構わないということになってしまいます。
商標が「深谷ねぎ餃子」なんだから、買う人は深谷ねぎが入っていると思うじゃないですか。だから、「この書き方では品質誤認が生じるよ」、「このままでは商標登録できないよ」と審査官は言っているわけです、
商標の審査で、審査官が「このままじゃ商標登録できないな…」と判断した時は、特許庁から「拒絶理由通知」という書類が届きます。私のクライアントも「拒絶」なんて言葉を聞くと絶望的に感じる人が多いみたいです(笑)。でも、これは審査官の中間的な判断。ひっくり返せる可能性はあるんです。
現にこの拒絶理由通知でも、
「(深谷ねぎ)以外の商品について使用するときは、商品の品質について誤認を生ずるおそれ」があるとした上で、
「ただし、本願商標に係る指定商品を例えば「埼玉県深谷市産のねぎ入り餃子」に補正したときは、この拒絶理由は解消します。」
と書かれていました。
審査官が答えを教えてくれている!だから、書類を審査官の言ってる通りに書き直せば商標登録される可能性はあったんですよ。それなのに、なぜかこの方は書類を直さなかった。このため、拒絶査定が確定してしまい、商標権を取ることはできませんでした。
あぁもったいない!
この商標は、「商品の産地(深谷)+原材料(ねぎ)+普通名称(餃子)」。ネーミングとして見ると、正直、独自性に乏しく弱いブランド名です。通常は商標出願の審査でも、「識別力(≒独自性)がない」という理由で拒絶されることが多いんですよね。
でも、この商標は文字だけでなく、ロゴマークが入っていたことで審査官が独自性・識別力を認めてくれたんだと予想します。
審査官が直せばOKと言っているんだから、そこに乗っかって商標登録してしまえばよかったんですよ。商標登録に成功していれば、少なくともあのロゴを含む形の名前は守ることができて、他社に真似されることはなかったんだから。
いつも言っていることですが、商標登録は「商標(文字やロゴマーク)」だけではありません。その商標を使用する予定の「商品・サービス(役務)」のチョイスが大事です。この例を見れば分かる通り、商品・サービスの書き方が悪かったことで商標登録に失敗することもありますからね。
■ 「爆じゅう餃子」。グランプリ受賞、ネーミングもいいこの餃子がノーガードとはもったいない!
同じ冷凍ケースで隣に並べられていたのがこの餃子「爆じゅう餃子」です。群馬・太田のGYO-TENさんの商品で、累計300万個突破、2025年9月のジャパン・フード・セレクションで最高評価のグランプリを受賞しています。
「爆じゅう」。箸を入れると、肉汁がこぼれてくる。口に入れれば、口の中いっぱいに肉汁が広がる。そんな様子が伝わってきませんか?
では、「肉汁餃子」なら、どうでしょう?
実は、この「肉汁餃子」。別の会社が商標を出願していました。ですが、残念ながら拒絶されています(商願2015-017358、商願2015-031785)。「旨味肉汁餃子」という商標も出願されていました(商願2021-042895)。
これらの商標の拒絶理由は、商標に識別力(≒独自性)がないこと(商標法第3条第1項各号)。「肉汁餃子」だと、肉汁があふれる餃子という商品の説明にすぎない、と審査官は判断したということです。
でも、「爆じゅう」は一般的な表現ではないし、商品の内容説明とまでは言えません。いわゆる、「造語」です。
商品内容を説明しているわけではないのに、イメージが伝わる。これが良いネーミングの特徴なんですね。この商品・この会社のシンボル(ブランド)として機能する可能性は十分にあるし、識別力(≒独自性)を認められて商標登録される可能性も十分にあると、私は思っています。
ところが…。.
J-Platpat(特許情報プラットフォーム)を調べても、「爆じゅう餃子」という商標が出願された形跡は見当たりませんでした。拒絶されて諦めたのではなく、商標登録にチャレンジすらしていないということです。
良い名前を見つけた。実績も積み上げた。商標登録をすれば自分たちだけが使えて、このブランドを盤石なものにすることができたはずなのに…。
「深谷ねぎ ぎょ~ざ」と「爆じゅう餃子」。
同じ冷凍ケースの中に、商標を出願しても商標登録することができない名前と、商標登録することができるはずなのに出願さえしていない名前が並んでいる。こういうことはたくさんあるんでしょうね。世の中の縮図を見ているようです。
帯に短しタスキに長し。どちらも盤石のブランドを築けているとは言えなそうです。
■ 餃子売り場が教えてくれた、3つの教訓
今回の2つの事例から学ぶべき教訓を3つ挙げます。
① つまらないネーミングをすると、ブランド化することができない。
商品内容の説明は商品名とは言えないんだ、と考えておきましょう。商標登録もできない可能性が高いので、あなたがその名前を独占することはできません。自由競争です。
あなたより資金力のある企業がその名前を使いだせば、あなたが築いた信用は全て持っていかれます。
② 良いネーミングをしても、商標登録をしなければブランドにならない。
せっかく良い名前を付けても商標登録しない限り、その名前は誰のものでもありません。言い換えれば、誰かがその名前を勝手に使っても、あなたに文句を言う権利はありません。
万が一、誰かに先に商標登録の出願をされ、商標権を取られてしまうと、あなたはその名前を使えなくなります。あなたが先にその名前を考えて使い続けていたとしても、商標登録の出願をしていない以上、その名前の独占を放棄したと取り扱われてしまうのです。
「先使用権」を主張すればいいじゃん!と言う人がいそうなので一言。
商標法では「先使用権」があります。他人に商標権を取られてしまっても、先に商標を使っていた人がその商標を継続的に使える例外的な取り扱いです。ただ、これは認めてもらうための条件が厳しい…。
「周知性」といって、一定の範囲内で有名な商標じゃないと認められません。最初から、「先使用権」を当てにするのは危険です。
③ 拒絶理由通知が来ても覆せる可能性はある。
拒絶理由通知は審査官の第一印象です。商標の審査で商標の内容を変更することはできませんが、審査官の判断が間違っているという反論はできますし、商品・サービス(役務)に関する記載を直すだけで、拒絶理由が解消されるケースもあります。
拒絶理由に絶望してあきらめないこと。
「最後まで希望を捨てちゃいかん。あきらめたらそこで試合終了だよ」
(漫画『SLAM DUNK』より引用。湘北高校バスケ部監督・安西先生の言葉)
商標登録を考える前に、まずはネーミングから。
「私にはネーミングセンスがない…」は言い訳です。センスがないのではなく、正しいやり方を学んでいないだけです。ネーミングは極めてロジカルです。お客様の感情は論理的に動かせるのです。
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そして、「うちの商品名、大丈夫かな?」と気になった方へ。ネーミング・ブランディング・商標登録のご相談は、クロスリンク特許事務所へどうぞ。
それでは、また次回。弁理士・ネームチェンジャー®のヤマダでした。








山田さん、こんにちは⭐
全く知らない世界のお話で面白かったです🎵
有難うございました^^