カニカマの逆襲。スベった「Ju-Sea」、大化けした「ほぼカニ」
売れる名前は「作る」のではない。「見つける」もの
おはようございます。弁理士・ネームチェンジャー®のヤマダです。
先日テレビをつけたら、「カニかまの逆襲」という特集がされていました。あのカニカマが、いまや本物のカニを脅かす存在になった、という内容です。その主役が、カネテツさんの「ほぼカニ」でした。押しも押されぬ大ヒット商品ですよね。
この「ほぼカニ」、実は最初、まったく違う名前で売られていました。そこから名前を変えて、大化けしたヒット商品だったんです。
今回のテーマは「リネーム」。名前を変えることで、お客さんに届くようになったヒット商品の実例を、ネームチェンジャー®の視点でバッサリ斬っていきます!
スベった「Ju-Sea(ジューシー)」
この「ほぼカニ」。元々は違う名前でした。その名も「Ju-Sea(ジューシー)」。
ジューシーな美味しさ、かまぼこは海の幸だから「Sea」をかけた。ふたつの意味を重ね合わせたネーミングです。キレイな響きです。洒落た感じもする。
ただ、これが売れなかった。大失敗。発売から1年ほどで、姿を消すことになります。
考えてみてください。スーパーの棚に並んでいる「Ju-Sea」の文字。通りかかった買い物客の人たちにはどう見えるでしょうか?
なんの商品か全くわからない。興味・関心を惹くキッカケになるワードもない。立ち止まることなく素通りされる(苦笑)
「Ju-Sea(ジューシー)」は「自己満ネーミング」だった
商品開発や広報部門の人たちはすごく考えたネーミングだったと思いますよ。ジューシー×海。「うまいこと言えた!」と、悦に入っていたはずです。
でも、残念ながら買い手側の視点が欠けていました。お客さんの側のメリットが一切伝わってこない。買ってみたいと思わない。作り手が「言いたいこと」を言っただけ。
ネーミングの現場ではこういう事がよく起こります。いわゆる「自己満ネーミング」です(笑)
キレイな名前、お洒落な名前、カッコいい名前。マーケや広報の会議室では盛り上がる。でも、「事件は会議室で起きてるんじゃない!現場で起きてるんだ!!」。
私のところの相談案件でも、結構あるあるでしてね。その時はパスタの商品名に関する相談だったので、「青の洞窟症候群」と命名しました(この話は僕のブログに書いています。「青の洞窟症候群」で検索してみてください)。
「ほぼカニ」誕生のきっかけは、社長が漏らした「生の言葉」
残念ながら失敗に終わってしまった「Ju-Sea」。ここから、どんなキッカケで復活したのか?
これはカネテツさんの公式サイトにちゃんと書いてありました。
「ほぼカニ」が誕生したきっかけは、試作品を食べた当時の社長(現・会長)が、思わず漏らした
「これはもう、ほぼカニやん」
という一言。それをそのまま商品名にしたのが、「ほぼカニ」です。
社長は作り手側の人です。でも、この言葉は、試作品を「食べた人」の素直な感想。思わず出てしまった本音なんです。
だから、お客さんにも刺さった。お客さんも試食したら、同じことを思うはず。「なにこれ、ほぼカニやん!」って。
さらにカネテツさんは、パッケージに「※カニではありません」と正直に書いちゃった。この潔さがまた面白いと、SNSで火がつきました。その結果、2022年に日本ネーミング大賞で最優秀賞まで受賞したんです。
ネーミングは「作る」もんじゃない。「見つける」もの
「ほぼカニ」の例でわかるのは、ネーミングは、ゼロから「作る」もんじゃない。元々あるものを「探す」、「見つける」ものだ、ということ。
いい名前って、頭を捻って絞り出すものだと思っていませんか?
マーケの知見を導入して、ネーミングのテクニックを総動員して…。
でも、そういうやり方をすると、盛ったネーミングになりやすい。私は、むしろそのゴテゴテを削り落とす、奥に隠れている本質や本音を”削り出す”ものだと思っています。
「これはもう、ほぼカニやん」
これは、まさに心の声。飾ったり、カッコつけたりしていない、正直な一言。会議室で腕を組んでうなっていても出てこない名前です。
だから、私がネーミングのご相談を受けるとき、いちばん丁寧にヒアリングするのは、「どんな商品か?」じゃないんですよ。「なぜ、この商品を作ろうと思ったんですか?」「どんな思いが込められているんですか?」「誰に届けたいんですか?」
商品が生まれるまでのプロセスの方です。そこに、ヒントになる言葉が隠れていることが多いから。それを一緒に掘り起こして、削り出す。それがネームチェンジャー®ヤマダの仕事なのです。
(この削り出しの過程を、米粉パスタ「おいで食べ米(まい)!」の開発者さんと対談した動画があります。ご興味あれば、こちらからどうぞ👇️
弁理士の視点・商標登録の視点
私も弁理士なので、商標登録のことも最後に触れておきましょう。
私が、「ほぼカニ」を商標登録したいと相談されたら、登録の可能性は「五分五分」って、答えたでしょうね。
商品「かまぼこ」に、「ほぼカニ」。原材料をそのまま説明しているだけ、原材料がカニでないなら「カニが入っている」と勘違いする人が出てくるおそれがある(品質誤認)、そんな理由で審査でNGが出る可能性もありますよ、と。
ただ、「ほぼカニ」はちゃんと、商標登録されています。この、「ほぼ」っていうのが絶妙なんですよね。「ほぼ」ということは、本当のカニではないんだろうな、違う材料をカニ風味にしたんだろうな…って読めますからね(笑)
そして、パッケージにもあえて、「※カニではありません」って書いちゃった。「これはニセモノです」といい切る潔さ。ここが消費者に好感をもって受け入れられたんだと思います。
良い名前が見つかったと思ったら、登録の可能性が五分五分でも、まずはチャレンジしてみることです。確実に登録できないとわかると、諦めてしまう人が多い。これは勿体ないなと思いますよ。通ればラッキーなんですから。
信用を積み上げ、その名前を育てていくには、やはり商標登録している方がいいのは間違いありません。ぜひ、チャレンジしてみてください。
中小企業・スタートアップ企業の経営者の皆さんへ
あなたの会社の、新商品の名前。
会社の会議室の中で、カッコよさで決めていませんか?
もし少しでも心当たりがあれば、一度立ち止まって考えてみてください。
答えは会議室の中ではなく、現場に落ちています。試作品を食べたお客さん、汗をかいている現場のスタッフさんが、思わずこぼした一言。「これ、◯◯やん!」を見逃していませんか?
「事件は会議室で起きてるんじゃない!現場で起きてるんだ!!」ですよ(笑)
まとめ
この記事のポイントをインフォグラフィックスにまとめました。
「ネームチェンジャー®の視点」は、旬のニュースを弁理士・ネームチェンジャーの視点でバッサリ斬り、中小企業やスタートアップ企業の経営者の方に、商標登録やネーミング・ブランディングのヒントをお届けするニュースレターです。
それでは、また次回。弁理士・ネームチェンジャー®のヤマダでした。










商標登録やネーミング、気になっているトピックなので、大変勉強になりました😊